3. 循環型経済システムを目指して
使い捨ての時代は終りにしなければなりません。限りある資源を大事に使うことが求められるています。特に石油、銅、亜鉛などの埋蔵資源は有限です。現在の先進国の産業は石油、天然ガスが最も重要なエネルギーであると共に、最も重要な製品の原料でもあります。ところが、このままの使用状態が続くと、石油は45年で、天然ガスは64年で完全に枯渇すると算出されています。人間の叡智はそれまでに代替え物質を創造するでしょうか?
私達は、今までのような大量消費は許されません。これからは、一度使った製品を原料に戻す”再資源化(Recycle)”、廃棄物を出さない”発生抑制(Reduce)”、そして”再利用(Re-Use)”する経済システムを目指すことが必要です。ドイツでは1996年10月、既に”循環型経済及び廃棄物法”が施行されています。そのためには、リサイクルしやすい物造り、生産や流通の段階で原材料の使用量を減らす物造り、寿命の長い物造り、修理体勢の整備、使用済み製品の回収体制の整備、等々と同時に、環境にやさしい原材料の積極的な使用が何よりも求められています。
4. ウールは地球を汚さない
ウールは19種のアミノ酸の配列を基本としたケラチン(Keratin)というタンパク質で構成され、完全に生分解される繊維です。土中の微生物によって、まず繊維の表面のキューティクル(Cuticle)が侵され、次第に細胞問および細胞内の物質が損傷を受け、フィブリル化し分解が進行します。
ウールが完全に生分解され土に戻るまでの期間は、土壌の質や温湿度など環境条件によって左右されますが、一般には1〜3年位といわれています。海中では2ケ月程度で分解されるという報告もあります。
大阪府立産業技術総合研究所、生産技術部繊維加工グループの菅井実夫氏等が純毛糸を土中に埋設して経時変化を観察した研究レポートがあります。それによると「埋設サンプルの物性変化は、30日で50%強力が低下し、伸度は90%の低下が認められ、既にフィブリル化が進んでいる。微生物の作用であろう劣化は予想以上に速く進行していた。」と報告されています。(平成10年度大阪府立産業技術総合研究所・研究発表会要旨集、P161による) このように、ウール製品であれば廃棄物を土中に埋めても完全に分解されて土に戻り、しかもそれが植物の成長促進効果を生みます。このようにウールは分解する時も地球環境を損なわない、極めて自然にやさしい繊維です。
5. 拡大再生産の出来るウール
1996年度に世界中で生産された繊維の総量は4,430万トン。その内訳は化合繊が52%、綿が43%、ウールが3%、その他が2%となっています。ウール・羊毛は全体の高々3%に過ぎませんが、循環型経済システムの中で生産量を増やすことが可能な繊維です。
総繊維の生産量の半分以上を占める合繊の原料は、石油に依存しています。前述のように石油の埋蔵量はあと45年で底を尽くと言われています。製造過程でのエネルギーの消費も多く、廃棄物の処理過程においても多くの問題を含んでいます。この点ウールは地球環境にもやさしい繊維です。太陽と適度の雨と草があれば羊は育ち、地球環境を破壊する懸念も、資源が枯渇する心配も有りません。まさに循環型経済システムに適合した、21世紀の繊維です。